午前2時。恐怖の時刻でした。
階上より降りてくる足音、ヒタヒタ・・・。家族の就寝時間を毎晩のように狙っていました。
右手には一本のカセットテープが握られています。嬉々としてテープレコーダーに突進していきます。
ガチャ!スピーカーから流れてくる出来たてホヤホヤの彼の新曲を睡魔と闘いながら聴き入る私たち。曲が終わる。ほっとする家族。が、その瞬間、すぅーっと右手が動き「停止」、「巻き戻し」、「再生」。それは毎晩のように繰り返される一連のコースでした。
『で、どうよ、この曲、セツナイしょ?』と14歳になる少年は破顔一笑。
このため、家族は慢性の睡眠不足に陥っていたのでした。