梅雨時の早朝。
Hugeは眠っているようでした。
椅子に腰掛けたままの姿でした。
パソコンのディスプレイには音の波形が映し出されていました。
家族の手には負えず、パソコンの電源はそのままに。
生地、富士市での葬儀を済ませ、家族が再び、埼玉にある部屋に足を踏み入れたのは一週間後のことでした。カーテンで閉ざされたあるじ不在の薄暗い部屋。青白い異様な光がディスプレイから放たれていました。
パソコンから音楽機材に接続されたおびただしい量のコード。今にも発火しそうなほど熱くなったタコ足配線のコンセント。
学友たちの手を借り、悪戦苦闘の末、半日がかりで電源を落としました。
キーボードの左側には年季の入ったマグカップ。
中央のシンセサイザの上には愛用のヘッドフォン。
そして、右側には手垢にまみれたマウス。
その傍らに、初めて依頼されたアレンジの音素材。
『来ましたよ~。アレンジ(の依頼)。朝までに仕上げるね』
その日の深夜、電話で会話を交わしていました。
聴いてみたかった。
安室奈美恵さんのHugeアレンジ。
2006.10.20.