track38■Hugeアレンジ

梅雨時の早朝。

Hugeは眠っているようでした。
椅子に腰掛けたままの姿でした。
パソコンのディスプレイには音の波形が映し出されていました。



家族の手には負えず、パソコンの電源はそのままに。
生地、富士市での葬儀を済ませ、家族が再び、埼玉にある部屋に足を踏み入れたのは一週間後のことでした。カーテンで閉ざされたあるじ不在の薄暗い部屋。青白い異様な光がディスプレイから放たれていました。

パソコンから音楽機材に接続されたおびただしい量のコード。今にも発火しそうなほど熱くなったタコ足配線のコンセント。


学友たちの手を借り、悪戦苦闘の末、半日がかりで電源を落としました。

キーボードの左側には年季の入ったマグカップ。
中央のシンセサイザの上には愛用のヘッドフォン。
そして、右側には手垢にまみれたマウス。


その傍らに、初めて依頼されたアレンジの音素材。

『来ましたよ~。アレンジ(の依頼)。朝までに仕上げるね』
その日の深夜、電話で会話を交わしていました。



聴いてみたかった。
安室奈美恵さんのHugeアレンジ。

2006.10.20.

2006年10月20日