track23■納涼

夏、真っ盛り。
ベランダを隔てて離れにあるHUGE.STUDIOでは、壁掛け式の扇風機がカクカクと音を立てながら首を振っています。フルスピードでファンは回転しています。各種機材からは熱が発散し、スタジオ内はサウナ状態。過酷な条件の下、Hugeは汗だくになりながらシンセサイザーに向かっています。スピーカーからは音切れのいい「クール」なリズムが叩き出されています。
スタジオには空調設備は一応あるにはありますが、Hugeはクーラーを使いません。地球環境に優しい省エネライフとは聞えはいいのですが、正しくは「使えない」のです。
家屋全体に許されている供給電力量の問題でした。

油断するとブレーカーが落ちます。ある時はテレビを付けた瞬間。ある時は洗濯機のスイッチを入れた瞬間。トイレの電灯ひとつつけるにも家族は細心の注意を払っています。暑いような涼しいような。まるで「クロヒゲ危機一発」をやっている気分でした。

その夜、ブレーカーが落ちました。家全体が漆黒の闇に。その夏、二度目のパワーカットでした。
『だれ?!』

私たちは5人家族。容疑者の確率は1/5。娘二人はもう寝ています。Hugeにはアリバイがあります。え、ワタシ?

母屋の仕事場にいる父親がクーラーの設定温度を1℃下げていたのでした。


『あのフレーズ、もう出てこないよ』不機嫌なHuge。
「ああゆう時って、プラグドは弱いよなぁ」反省の色が見えない父親。
『・・・』
「電気の通っていない無人島にでも行ったらどうやっておまえ、曲作んの?」
『無人島、行かないし!』

私の記憶によると、その夏、Hugeは3曲ほどオリジナルを「フリーズ」させています。
不可抗力の停電で、熱帯夜にもかかわらず、暑いような涼しいような。
これってクールビズ?

 

▶ENGLISH:A frozen tropical night

2006年06月09日