track35■バイエル

リコーダーはものの見事に挫折しました。しかし、妹から強奪したピアニカは性に合ったのでしょう、メキメキと腕を上げていきます。ついには4小節の曲を作るまでに。幼馴染をテーマにしたその作品に愛着があったのか、後にシーケンサ、シンセサイザ、パソコンなど様々な音楽機器を操り、最終的には15ものヴァージョンを手掛け、データに残していました。

ピアノに初めて触れたのは14歳。指遣いはでたらめで、親指、人差し指、中指の3本で弾いていました。憧れのアーティストが奏でる軽やかな早弾きのピアノ曲。コピーしようとします。が、指遣いに無理があり断念。意を決してピアノ教室へ通い始めます。

「バイエル」で指遣いを矯正していきます。
三年間にわたり、ご指導いただいたのは香奈子先生、亜里沙先生。
週一回、夕方になると、妹と連れ立って浅間大社の森を抜け、せっせと教室に通いました。前半の30分がHuge、後半の30分が妹に割り当てられたレッスン時間でした。ところが練習熱心(話し好き)のHuge故、時間が押しぎみで、妹のレッスン時間が大幅に削られることもしばしばあったようです。いまだに「スピッツ」のコードしか弾けない自分を妹は嘆いています。

うら若き美しい独身女性(当時)であったお二人の先生。男子高校生にとっては「マドンナ」だったのでしょう。ピアノ教室には雨の日も、風の日も、真冬の凍てつく日も、ただの一度も休むことなく通いつづけました。

指遣いを懸命に練習している様子を録音したテープが出てきました。再生すると、
♪ドミレファミソファラソシラドシレド ドラシソラファソミファレミドレシド
たどたどしいピアノの音が聞こえてきました。

 

▶ENGLISH:Beyer

2006年09月23日