memoirs
 「Hugeに繋がる情景」と題し、Hugeにまつわるエピソードを彼の言葉を織り交ぜながら少しずつスケッチしていきたいと思います。
 Scenes linked to Huge -track40-■ヘッドホンの中の宇宙Part2

2005年5月21日。東京町田市。
東急デパート屋上にあるプラネタリウム「東急まちだスターホール」。Huge音楽と宇宙映像のコラボレーション「ヘッドホンの中の宇宙」初日。

待ちに待ったその日がついに訪れたのでした。
尾久土教授が、波田野さんが、「実現させましょう」と仰って下さった企画で、それはプラネタリウムでの実験的な試みでした。

館内の照明が落とされました。

日蝕の実写画像のダイヤモンドリングにHugeの♪solar eclipseが重なっていきます。私は体の震えを押さえることができませんでした。

♪Relaxが流れだすと、惑星地球のウォーターフロントの夕刻が丸天井に投影されました。ベイブリッジが金色に輝いています。まるで、Hugeが映像を見ながら音入れしたかのような錯覚に陥りました。

原始太陽系の営み、惑星の誕生と消滅の歴史の映像に♪SUNDAY MORNINGが迫力を与えています。

そして、クライマックス。
満天の星空に♪LEGEND OF ZEPHYRが響きわたっています。
「あなたはきっとそこにいるんですね、、、」というナレーションで私はもうノックアウト。傍らでは夫が鼻を赤く染めながら天を仰いでいました。

7月18日までの約60日間のロングランがこうして幕を開けたのでした。

尾久土教授、波田野さん、スターホールの永田さんはじめ、スタッフの皆様、ありがとうございました。

Part3へ

2006.11.13.
 Scenes linked to Huge -track39-■ヘッドホンの中の宇宙

尾久土教授が拙宅にお立ち寄り下さった折(memoirs-track9,10)、Hugeのことをあれこれ、お話しさせていただきました。
Hugeが音楽を始めた経緯、楽曲♪solar eclipse(日蝕)のこと、、、

Hugeのオリジナル作品のインデックスに目を走らせながら、宇宙系のタイトルを付けた作品が多いことに天文学者である教授は感慨深げでした。

「『ヘッドホンの中の宇宙だ』とHugeはよく言っていました」そう私が申し上げると、
「Huge君の音楽と宇宙映像のコラボレーション、実現させましょう」と教授は言い残し、「LIVE!ECLIPSE2003」の中継地であるお台場へ向かわれたのでした。



しばらくして、教授の大学時代の後輩にあたる波田野聡美さんがはるばる来静して下さいました。波田野さんはプラネタリウム映像制作会社でシナリオを担当されていて、宇宙を体感させるHugeの音楽に関心を寄せて下さいました。

「関東圏のどこかのプラネタリウム館で、この企画、実現させたいですね」と波田野さん。


プラネタリウムでHugeの曲を聴けるかもしれない!!
そう思っただけで、「明日」が無性に待ち遠しく思われ始めたのでした。

2006.11.06.
 Scenes linked to Huge -track38-■Hugeアレンジ

梅雨時の早朝。

Hugeは眠っているようでした。
椅子に腰掛けたままの姿でした。
パソコンのディスプレイには音の波形が映し出されていました。



家族の手には負えず、パソコンの電源はそのままに。
生地、富士市での葬儀を済ませ、家族が再び、埼玉にある部屋に足を踏み入れたのは一週間後のことでした。カーテンで閉ざされたあるじ不在の薄暗い部屋。青白い異様な光がディスプレイから放たれていました。

パソコンから音楽機材に接続されたおびただしい量のコード。今にも発火しそうなほど熱くなったタコ足配線のコンセント。


学友たちの手を借り、悪戦苦闘の末、半日がかりで電源を落としました。

キーボードの左側には年季の入ったマグカップ。
中央のシンセサイザの上には愛用のヘッドフォン。
そして、右側には手垢にまみれたマウス。


その傍らに、初めて依頼されたアレンジの音素材。

『来ましたよ〜。アレンジ(の依頼)。朝までに仕上げるね』
その日の深夜、電話で会話を交わしていました。



聴いてみたかった。
安室奈美恵さんのHugeアレンジ。

2006.10.20.
 Scenes linked to Huge -track37-■わらべ歌とHuge

私たち一家は以前、移動距離1キロというプチ引越しをしています。Huge、高校時代のこと。

引越し先の裏がたまたま幼稚園でした。

HUGE.STUDIO(Hugeの仕事場兼寝室)の住人は大きな悩みを抱える事になります。

早朝から、園児たちによる太鼓、笛、木琴、ハーモニカの大合奏。HUGE.STUDIOの窓を揺さぶる勢いです。
お遊戯会直前ともなると、園児たちの黄色い歌声が夜行人間Hugeの寝こみを襲います。

『どうにかならないのか』と当初は不機嫌さを露にしていましたが、慣れというのは恐ろしいもので、
『うるせぇ!!』と文句を言いながら、高鼾で昼寝しているHugeがいました。
そのうち、園児たちに真っ向勝負を挑むかの如く、彼らの歌声にピアノ伴奏をつけるという余裕まで見せるようになります。

♪どんぐりころころ、♪鳩ぽっぽ など、幼少期には童謡はよく歌って聴かせていました。しかし、既に思春期を過ぎて、これほどまで童謡を聴かされるとは本人は夢にも思わなかったことでしょう。


進学先の街のイベントでストリートダンス用の音楽を担当することに。筋金入りの‘わらべ歌研究家’Hugeは♪とおりゃんせをトランス風にアレンジします。大胆にも、歌詞に「手を入れ」、自ら唄うという荒業までも披露したのでした。

♪・・・


あの子の七つのお祝いに
シンセをあげてくだしゃんせ

2006.10.14.
 Scenes linked to Huge -track36-■reason for…

大学進学を機に郷里を後にしたHuge。私たち家族に自作の曲を残していきました。

♪reason for…


ファーストアルバム[LEGEND OF ZEPHYR]は当初、8曲収録の予定でしたが、父親の猛烈なリクエスト(駄駄)で、♪reason for…をボーナストラックとして収録しました。

その作品はThe Band、Tom Waits、Rickie Lee Jones、Bill Evansに学生時代から入れ揚げていた父親の「泣ける」ツボを狙いすまし、射抜いていました。私もとても好きな曲で、郷愁を誘う心落ち着く作品です。

8曲目の♪far goneが終わり、気長に待っているとピアノとシンセのアンサンブルが聞こえてきます。

reason for…
一体何への理由だったのでしょうか。

ナゾ。

2006.10.06.
 Scenes linked to Huge -track35-■バイエル

リコーダーはものの見事に挫折しました。しかし、妹から強奪したピアニカは性に合ったのでしょう、メキメキと腕を上げていきます。ついには4小節の曲を作るまでに。幼馴染をテーマにしたその作品に愛着があったのか、後にシーケンサ、シンセサイザ、パソコンなど様々な音楽機器を操り、最終的には15ものヴァージョンを手掛け、データに残していました。

ピアノに初めて触れたのは14歳。指遣いはでたらめで、親指、人差し指、中指の3本で弾いていました。憧れのアーティストが奏でる軽やかな早弾きのピアノ曲。コピーしようとします。が、指遣いに無理があり断念。意を決してピアノ教室へ通い始めます。

「バイエル」で指遣いを矯正していきます。
三年間にわたり、ご指導いただいたのは香奈子先生、亜里沙先生。
週一回、夕方になると、妹と連れ立って浅間大社の森を抜け、せっせと教室に通いました。前半の30分がHuge、後半の30分が妹に割り当てられたレッスン時間でした。ところが練習熱心(話し好き)のHuge故、時間が押しぎみで、妹のレッスン時間が大幅に削られることもしばしばあったようです。いまだに「スピッツ」のコードしか弾けない自分を妹は嘆いています。

うら若き美しい独身女性(当時)であったお二人の先生。男子高校生にとっては「マドンナ」だったのでしょう。ピアノ教室には雨の日も、風の日も、真冬の凍てつく日も、ただの一度も休むことなく通いつづけました。

指遣いを懸命に練習している様子を録音したテープが出てきました。再生すると、
♪ドミレファミソファラソシラドシレド ドラシソラファソミファレミドレシド
たどたどしいピアノの音が聞こえてきました。

2006.09.23.
 Scenes linked to Huge -track34-■JUST ALL MY HEART

『本番はヴァイオリン、12本つけるよ』


中学3年生の時の作品、♪JUST ALL MY HEART。いつの日かオーケストラに差し替えることを想定して作曲したようです。
この曲がたいへん気に入った私に、
『じゃあプレゼントするよ』とあっさり。

『お母さんのお葬式にフルオーケストラで演奏してもらおうか』
「それじゃあ、あたし聴けないやんか!」

猛烈なスピードで叩き出されているドラム音に
「このドラムは一人じゃ無理だよね。何人いたらできるの?」
『千手観音ならできるっしょ!』
「腕が何本もある観音様のこと?」

他愛ない会話が続きました。



JUST ALL MY HEART。
クラスメイトが命名してくれたそうです。その方のお名前は存じ上げませんが、とても素敵なネーミング、ありがとうございました。

ただ、葬送行進曲にしてはいささかノリが良すぎるかもしれません。

2006.09.17.
 Scenes linked to Huge -track33-■Forever yours

♪Forever yours/Every Little Thing:ANGELIC SUMMER MIX 5.1CH SURROUND REMIXは耳の良さを買われての大仕事だったようです。5.1CH専用スタジオでの収録に立ち会ったそうです。他界するニ週間前のことでした。

「5.1チャンネルサラウンドって?」よせばいいものを私は質問してしまいました。早速、5.1CHミニ講習会を受講させられる羽目に。厳しいながらも懇切丁寧な講義でしたが、さすがに40おばさんの頭には専門用語は入ってきません。
『そっちに帰ったら詳しく教えてやるよ。でも、今のところ2チャンネルステレオでどこまで音空間を表現できるかがオレの課題だから、、、』

他界後、二ヶ月ほどしてレコード会社より1枚のDVDが届けられました。Hugeが音入れした♪Forever yoursがボーナストラックとして収録されていました。CDジャケットにはHugeを抜擢して下さったリミックスディレクターM氏やスタッフの方々からの言葉がクレジットタイトルに添えられていました。

To Huge,
We all thank you for the work you've done for us. It's a pleasure for us to work with you.
May you rest in peace.

2006.09.08.
 Scenes linked to Huge -track32-■男子厨房ニ入ラズ

仕事から離れて、個人的趣味で様々なジャンルのアレンジ、リミックスを手掛けていたようです。

2-STEPの貴公子Craig David、テクノの重鎮UNDERWORLDのHugeリミックス。皆様にお聴かせできなかったのが残念です。
Air on G-string(G線上のアリア)のHugeトランスミックス。あの音楽の父J.S.バッハが聴いたらさぞかし驚くことでしょう。

駅前留学で有名な英会話学校のCMソング。Hugeは容赦しませんでした。
「ippai kikete ippai shabereru」 嘴をもつウサギがもの悲しいハスキーボイスで歌い上げていました。
あまりにセツナイ!

東武東上線池袋駅ホームの列車発着メロディーのアレンジにまで手を染めていました。聴いた(聴かされた)ことがあると学友が言っていました。残念ながら私たちの手元にはその音源はありません。

日常生活で耳にする種々雑多な「音」にもHugeは異常なまでの反応を示していたようです。日本の「音」をこよなく愛した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)先生も真っ青になるほどに。

ファミレスにて。
グラスに注がれる水の音。コーヒーカップがソーサーにあたる音。椅子を引く音。ナイフとフォークの金属音。製氷機から取り出される氷の音、、、
耳をそばだて、『この音、イケルネェ』『あの音、使エルネェ』

「一緒に食事をしていても落ち着かなかった」という証言まで出てくる始末。
厨房まで足を踏み入れなかったのはせめてもの救いです。

2006.08.28.
 Scenes linked to Huge -track31-■PIKADON ART LIVE in Tokyo

2005年8月3日。「PIKADON ART LIVE in Tokyo」最終日。
画家黒田征太郎氏と音楽家近藤等則氏によるインスタレーション。LIVE PAINTING(青山スパイラルガーデン)20:30スタート。

圧巻でした。


近藤氏はベース、キーボード、ドラムスを従え、大音量でトランペットを吹き鳴らしています。黒田氏はリズムに身を委ねタタミ3畳もあると思われるキャンバスにブラシを走らせています。

届け、この色彩!
届け、この音!
生者への鼓舞が、死者へのレクイエムが、その空間にありました。

「Huge君の曲で何枚か絵が思い浮かびました」
4日前の会場設営の際に黒田氏より声を掛けていただいていました。その時の黒田氏の静かな物腰からは想像できないエネルギッシュな姿がありました。

盛況のうちに「PIKADON ART LIVE in Tokyo」終幕。22:30。

深夜の撤収作業の後、Denny'sで腹ごしらえ。そして左手にCDコンポを携え、右手でカートを引き、原宿駅の始発に乗りこみました。

2006.08.18.
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